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闇夜に輝く

第50章 パトロン



覚悟を決めるのは海斗の方なのだという事に気付かされた。
自分の手でこの店に引き戻しておいて、今更躊躇することは黒服として間違っていると再認識するしかなかった。

「結衣菜の覚悟はわかった。ただし、店の外でのトラブルに関しては何もしてやれないからな。店としても黙認という立場な事を忘れないでくれよ」

「うー、でも結衣菜はこういうの初めてでどうしたらいいかわからないよぉ」

すかさず得意の困った顔で海斗を伺う結衣菜さん。
でも愛人関係に関するマニュアルなんてものはない。
なので海斗はこれまでキャストから聞いたトラブルを元に気をつけるべき事柄だけ話す事にした。

「まず、結衣菜の方から色々とせびったりしない様に。あくまで困ってるとだけ伝える。そして金銭の授受に関しては貰いすぎないこと。それから定期的に店に呼ぶ事。なぜならトラブルになった時に客とキャバ嬢という関係性を証明できた方がいい。大体、トラブルになるのは店に呼ばなくなったとき。客が店に落とす金額の分まで直接その女に使うようになると、かなりの大金になる為、関係性が変わる。客は完全に自分の女になったと勘違いするし、結衣菜も生活費の大部分をその客に頼るようになる。要するに自分の稼ぎよりも貢がれる金額が多くならない事が大事。いざという時に逃げられなくなるからね」

「わかったぁ、気をつける。じゃあこれも渡されたんだけどどうすればいい?」

そう言って結衣菜さんが薄いA4サイズの冊子を取り出し、テーブルに置いた。



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