闇夜に輝く
第51章 黒服として
この世界でトップクラスのキャストとして道を踏み外す事なく生きているキャバ嬢は無理をしてキャバ嬢をしている子ではない。
ある意味天職のような子なのだ。
元々人を魅了する何かがずば抜けている。
そこに演技が加わりさらに磨きがかかる。
夜の街にも違和感なく溶け込んでいる。
夜の世界を日常と捉えている。
けれど、サラさんがそういったトップキャスト特有の雰囲気を持っているかと問われると疑問だった。
5年、10年と長く続けていけばいずれそうなるだろうが、そうしてしまって幸せなのだろうか。
サラさんはまだ戻れる。
大学を卒業し、福島の地元に帰って会社のOLとして生きていく道だってまだ残っている。
北欧系のハーフっぽい顔立ちのサラさんであれば、きっと美人OLとして会社でも人気になるだろう。
安定感のある会社員と結婚し幸せな家庭を持つことだって可能だと思う。
その頃にキャバ嬢としての経験は一時の夢だったと思えるような人生だっていいのではないか。
だけど、3月に一度だけトップ10入りをしてからサラさんは少し変わってしまった。
ニューアクトレスのナンバー入りキャストというプライドが芽生えたからなのかもしれない。
そしてその雰囲気を纏おうと意識しているのも分かっている。
入店する前からサラさんのことを知っている海斗としてはその変貌に不安を感じていた。
海斗はこのままサラさんが空回り気味にドンドン突き進む事に危うさを覚える。
だから今までのように学生バイト感覚のキャバ嬢としてでもいいのではないか。
華やかな世界に憧れを持ったミーハー女子大生の感覚のまま、この世界にはまり込んでしまう前に大学を卒業して就職した方が良いように思えて仕方がなかった。