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闇夜に輝く

第51章 黒服として



しかし、増田さんからの言葉は非情なものだった。

「海斗の気持ちはよく分かった。サラの事をそれだけ理解してやれるんなら今後何が必要になるかは自ずと分かってるだろう?」

急に夜の世界の住人独特の色気をまとった雰囲気の増田さんは最後まで答えを言わない。

けれども海斗には雰囲気を変えた増田さんの姿を見て自ずと答えが分かってしまった。

「色管理…ですか」

自分からは言いたくなかった言葉。
それでも黒服としてしなければならないことがある。

逡巡する海斗をよそに、増田さんは淡々と話す。

「それが出来なきゃ、あいつはどうなる?俺は海斗の私情で勝手に辞めさせる事も、腰掛けキャストも認めないぞ。サラが今の勘違い女のままなら上手くいかずに必ず気持ちが切れる。その時に優しくされたホストやヤクザにハマって余計に金が必要になり、大学を辞めてまで必死に働いてくれても俺としては構わない。けどな、お前が側にいればどうだ?サラにとってお前は憧れの夜の世界の住人なんだろ?」

「ですが、俺はホストじゃないです。華やかな人種でもありませんし。何よりサラさんが俺の為に働いてくれるようになんてなりませんよ」

海斗の言葉に増田さんが一瞬フッと笑ったあと、真剣な眼差しをする。

「今のお前のポジションならばサラを落とす事はホストより簡単だ。それが色管理の不思議な所なんだよ。何十人もいる華やかなキャストの中で自分が女として選ばれたという優越感とプライドを植え付ける。それはナンバー1と同じくらいの価値がある。その対価としてそれに見合うイイ女になるようにと指示をする。そうすれば太客の見せ金につられてシッポを振ったり、細客をないがしろにしたりは無くなる。男と遊びに行きたいから店を休むといったこともない。それでサラが精神的にツラくなったらお前がプライベートでフォローする。いいか、お前が出来るか出来ないかじゃない。サラをスカウトしてきたのはお前だ。その責任を忘れるなと言っているんだ!」

増田さんの目は業界人のそれだった。

人を扱う商売人として、その商品の品質を高めてどう維持するか。
例えるなら疑似恋愛を演出する演出家。

そのためならば人としての道徳は捨てる。

増田さんにとってはキャストと黒服の関係さえも必要であれば疑似恋愛として金に変える。



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