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闇夜に輝く

第52章 捜査



非常口の扉を開け、階段でビルの屋上に出る。

タバコに火をつけ、そこから見える夜の繁華街のネオンを見つめる。

結局ツカサさんを守れなかった。

無理だった。

組織犯罪に加担した容疑者を庇ったりしたらどんな火の粉が降りかかるか想像もつかない。

増田さんの言葉がよみがえる。

『口だけの正義』

あの時のぶん殴られた痛みと、自分の不甲斐なさを思い出す。

先程の俺の証言でツカサさんのウソがバレてしまい、ツカサさんには不利に働くだろう。
きっとツカサさんと相良が個人的な付き合いではなく、キャバ嬢と客という関係性で居なければならない理由があったのかもしれない。

けれど、店や他のキャストに迷惑はかけられない。

犯罪の内容を聞いて即座にツカサさんを切り捨てる判断を下した。
しかし辞めた人間だといっても海斗の担当だったキャストには変わらない。

ツカサさんは北海道から上京したのを切っ掛けにセクキャバからキャバクラに転身した。

でも上手くいかなかった。

うちの店で仲が良さそうなキャストもいなかったし、すぐに身体を触らせるツカサさんは他のキャストから嫌われていた節もある。

だからなのかはわからないが、キャストから直接文句を言われないように、危ない交友関係をチラつかせて自分を守っていた。

そんなやり方をしているうちに、ヤクザにつけ込まれ、生活を捨てて逃げるように都内を去った。

なのに結局その原因となったヤクザとの関係だけは切れずに利用され、最後は犯罪者となってしまった。

何もしてやれなかったんじゃない。

海斗がツカサさんから離れただけだ。

あの時、どこかへ行ってしまったツカサさんを本気で探すことはしなかった。
増田さんや北条組、後藤組に睨まれてでも見つけ出していれば、今頃違う結果になっていたんじゃないだろうか。

けど今更、後の祭りだ。

あの時点ですでにツカサさんを見捨てていたのだから。

増田さん達がよく言う、

『裏社会との付き合い方は自己責任』

という言葉。

そう言われても、20代前半の若者達にとってその判断はとても難しい。


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