闇夜に輝く
第53章 色管理
海斗は振り返り、店の入口から店内までを見渡したあと、カウンターの後ろに並んだ色とりどりのリキュール類に目をやる。
そして、カウンターに立ててあったメニューを手元に持ってきてめくりながら、
「とても綺麗なお店ですね。私のような水商売の人間が言うのもおこがましいですが、ランチはかなり流行るんじゃないでしょうか。でもディナータイムは、もしかしたら苦戦するのかもしれませんね」
「ほう。なぜでしょう」
「料理からこの店のテーマがあまり見えないと感じるんです。もしかしたらすべてのメニュー構成を任せられるようなシェフがまだ見つかっていないんじゃないですか?あっ、すいません。祝いの席で水を差すような発言をしてしまいました」
海斗はメニューから目を離し、ちらりと東山という男の顔を確認しながら詫びる。
すると、東山は椅子ごとさらに海斗に近づき、小さな声で話しかける。
「中々鋭いご指摘ですね。バレてしまいましたか。どうかナイショでお願いします。実はオープン直前に料理長が辞めましてね。こだわりが強すぎて、コストや原価、価格の事で揉めたんです。彼の言いたいことは分かりますが、この店の維持費が月にどのくらいかかるのか全く理解していませんでした。なのでこちらから辞めてもらいました。けれど、新しいシェフの目星はすでについてますから不安はありませんよ」
東山は自信たっぷりの笑顔で胸を張る。
しかし海斗がじっと見つめると、思いっきり目が泳いでいた。