闇夜に輝く
第53章 色管理
海斗はそれを確認した後、また正面を向き、独り言のように話す。
「どうやら出資者の方は女性のようですね。それにあなたからもその出資者の方からも、あまり飲食業界の雰囲気が感じられないのですが」
海斗はそう言うとゆっくりと後ろを振り向き、パーティの中心にいる40代女性を見る。
そして向き直る途中で東山とまた目が合った。
すると、おどけたような演技をする東山。
「ははは、筑波さんは何でもお見通しだ。あの方は大手ジュエリーメーカーの社長夫人で、共同経営者なんですよ。えーと、筑波さんとはまたじっくりとお話ししたいものです。そうですね、こっちの名刺もお渡ししておきます。それでは、ごゆっくりしていって下さい」
そう言って一枚の名刺をテーブルに置き、逃げるようにその場を離れていった。
そこには経営コンサルタントという肩書きの付いた名刺が置かれていた。
海斗は2枚の名刺を懐にしまい、サラさんに声をかける。
「そろそろ帰るけど、サラさんはどうする?」
「えー?もう帰るの?」
「ごめんな。先帰るよ」
「あ、じゃあ私も行く」
周りの人に挨拶をしながら出口を目指す途中で東山と目が合うと、慌てて追いかけてきた。
「もうお帰りなんですか?」
「はい申し訳ありません。この後、用事がありますので」
「そうですか。お忙しい中、いらしていただき、ありがとうございました」
「こちらこそ、大変勉強になりました。それでは失礼します」
海斗の言葉に一瞬あっけにとられつつも、どこかホッとした表情を浮かべた東山は深々とお辞儀をし、海斗達を見送った。