闇夜に輝く
第53章 色管理
海斗はサラさんとグラスを合わせた後、聞いてみた。
「最近、自分の中で何か変わった?」
「ん~、変わってないと思いたいけど…」
「そっか。大学の友達とかと遊んでる?」
「うん、たまにね。だけどご飯とか、飲みに行くと奢っちゃうの。自分の方が稼いでるし、いいかなって思って」
「やっぱりか……。あと、友達が『これ欲しい!』って言う物に対して、『何でこんなものが?』って思わない?」
「う、うん。そんなに高くないし、買えばいいのにって思っちゃう。でも買ってあげるのも何か変だし」
「そうだよねぇ。じゃぁさ、前に来た時、店の前でサラさんが『ここ高そうだよ?』って言ったの覚えてる?」
「えっ?そんな事言ってた?あ、でも奢ってもらって当たり前とは思ってないよ。そこまで感覚はズレてない。割り勘って言われたら出せばいいかなって思った。
だって、海斗さんはお客さんじゃないし、元々今日は私のために時間を作ってもらったから。だけど私が全部出すのは海斗さんに悪いかなとかも色々考えてたよ」
サラさんは慌てたように取り繕う。
けれど根本的に考え方が変わってしまっている事に気付いていない。
「う~ん、うん。ちょっと聞いてね。あのね、20歳くらいの女の子はこんな店に連れてこられたら以前のサラさんのようにまず戸惑うと思うんだよね。 自分がお金を出すことを考えたり、付き合ってもいない人にこんなにお金を出させていいのかとか考える。
それから、男の人と2人で食事をしたりするのは例えそれがカフェだろうが、ファミレスだろうが、この人は私のことをどう思っているんだろうとドキドキすると思うんだよ」
「あっ!私だって…それはわかってるもん!けど今日は相手が海斗さんだし…」
「サラさんを責めてるわけじゃないんだよ。これはきっと夜の仕事を経験した人じゃないとわからない。男女の関係が歪になって接し方が変わってしまう。サラさんの友達の大学生と感覚が合わなくなってきている理由、何となく分かった?」
「うん…」
サラさんはしょんぼりしてしまった。
一緒に働いている時でさえこんな顔は見たことはなかった。