闇夜に輝く
第53章 色管理
すると、ぽーっとした顔をして見上げていたサラさんがそのまま目を閉じる。
海斗はおでこに優しくキスをしてからそっと離れた。
「も〜、海斗さんってヒドい人。何を考えてるのかちっとも読めないし。ねぇ、私の事ってどう思ってるの?好き?嫌い?」
海斗は優しくサラさんの髪に触れる。
「この仕事してるとさ、好きとか嫌いとかわからなくなるんだ。けどね、俺は一人でいるのが好きなんだけど、サラさんと一緒にいると落ち着くんだ。きっと他の女性ではそんな風にはならない。だからサラさんは特別な人だと思ってる。ここは俺にとって大切な場所なんだけど、誰かを連れてきたことはないよ」
夜の世界に長くいると、好きだとか、愛しているという言葉で口説く事がどれだけ滑稽かよくわかる。
嘘と虚栄に満ちた世界では、ありきたりな言葉ほど信用出来ない。
「これからは、今日みたいに俺と会ってくれないかな?」
「いいよ。海斗さんはいつも私が気づかないことを教えてくれるから。けど、こうやって店の外で会うのは私だけ?」
「どうかな。先のことは分からないよ。ただ、こうやって会うことでお互いに影響しあえる関係はサラさんだけかもね」
そう言って残りのスカイダイビングを飲み干す。
自分の本心を押し流すように。
しばらくして海斗は代行を呼んでもらい、会計を済ませた。
代行業者に運転してもらいながら、二人はBMWの後部座席に並んで座る。
サラさんの自宅までの道中、海斗はウトウトしているサラさんを抱き寄せたまま、無言で夜の街並を見続けていた。
自宅に到着したのでサラさんを起こすと、サラさんから提案される。
「…ウチ、寄ってく?」
「ゴメン、この車を優矢君に返さなきゃならないから、今日は帰るよ。また近いうちにね」
「う、うん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
サラさんを降ろし、車が走り出すと海斗は大きくため息をついた。
この先も定期的にサラさんとは店の外で会い続ける。
キャストが客に行う色恋営業と一緒で、一つ一つのステップを時間をかけて行う。
そうして少しずつ距離を縮めていかないと、色恋管理は長く続かない。
海斗は自分には向いてないなと改めて感じていた。