闇夜に輝く
第54章 勘違い客
そのまま更衣室へ行き、今度は年配の客に指名されていた楓さんからも情報を聞き出す。
楓さんは年配の客が坂東さんとVIP席で話し合いとなった時点で客席を離れて上がっていた。
「楓さん、もう着替えた?」
「うん。大丈夫よ」
海斗は更衣室のドアを開ける。
既に帰り支度を整えて帰ろうとしていた楓さんを引き止める。
「あの人ってどこの会社の人?」
「え?何、まだ揉めてんの?うわ最悪っ。えーと確か◯◯ってとこだったはず。待って、名刺探すね」
そうして楓さんがもらった名刺には大手電機メーカーの課長と書いてあった。
海斗はその名刺を預かる。
「楓さんには悪いけど、あの客、出禁になると思う」
「マジ?もう最悪っ!あいつソファの後ろからずっとお尻触ってきてたのに、金も払わないとかマジで殺したい」
接客中は我慢していたようで、かなり不満気。
それを察した結衣菜さんが
「か、海斗さん、シャンパンのバックは楓さんに付けてあげて」
と提案するが、楓さんがすぐに反対する。
「それはダメだよ。結衣菜ちゃんだって抱きつかれてたじゃん」
「ん〜、あの人はそんなにキャバクラ慣れてないみたいで、肝心な所には触ってこなかったから。楓さんの方の人は目立たないけどキモい触り方だったし。けど、楓さんが頑張ってくれてたからラストまで延長してもらえたようなもんですもん。だからバックは楓さんでいいんです」
「も〜、結衣菜ちゃんは可愛いんだから」
そう言って楓さんは結衣菜さんを抱きしめた。
えへへと嬉しそうにしてる結衣菜さん。