闇夜に輝く
第54章 勘違い客
海斗は楓さんから名刺を預かり、フロアに戻る。
相変わらず、VIP席では話し合いが続いていたが、酔っ払いの意味不明な論理に坂東さんも口調が荒くなっていた。
「だから、こっちはちゃんと明細も見せて説明してるでしょう!いい加減支払ってくれませんかね?」
「あー、だけど高すぎるって。4時間もいてないでしょ〜。延長の確認だって4回も来てないんじゃない?」
のらりくらりと言い訳して一向に支払いに応じようとしない。
さらに意味の無い論点ずらしで時間をかけ、相手が折れて値下げするのを待っている。
そんなたかをくくった様な態度が透けて見え、坂東さんの苛立ちも増していく。
「あんたはバカかよ!延長の確認って言ってんだから4時間いたら確認は3回だろ!それに2時間過ぎた時に、自動延長の確認に行ってるだろ?それを了承したのはあんたなんだぞ!」
「あれれ、そんな事言ってないぞ?勝手に延長させてるんならボッタクリじゃないか」
「あのねぇ、元々うちは自動延長の店なんですよ!それを親切で最初の2時間は確認に行ってるんだろーが!おっさん!本当にいい加減にしてくれませんかね。何回目ですかこの話は」
「なんか怖いなぁ。警察呼んでもらえます?」
「警察という言葉にビビるとでも?呼びたければどうぞ。うちはメニュー表もちゃんとしてますし、営業許可も下りている店ですから。けど、警察が来たら無銭飲食で捕まるのはあなたの方ですけどね」
「そーなのかなぁ。それにしたって高くない?」
「はぁ?あんたの言い分てさ、高級ホテルのスイートルームに泊まって値段が高いって言ってるのと一緒ですよ?」
堂々巡りなやりとりが続く中、そっと海斗がVIP席に近づき、坂東さんに名刺を渡す。