闇夜に輝く
第54章 勘違い客
けれど、今年から入った葉山君というボーイは本当にムカついてしまったらしい。
「さっきからうるせぇなぁ。田舎もんのガキが!もうしゃべんな、口臭ぇから!」
その言葉に反応した伊藤は標的を坂東さんから葉山君に変えた。
まぁ、喧嘩するのに、坂東さんと葉山くんだったら誰でもそうする。
「ほーら。本性現したな。ほれ、殴ってみろよ。バーカ」
そう言って、葉山くんに向かって唾を吐きかけた。
これはヤバイとボーイ達が一斉に葉山君を抑える。
坂東さんに比べれば見た目の怖さは劣るが、葉山君もその辺の不良よりよっぽどヤンチャだったりする。
案の定ブチ切れてしまった。
「てめぇこのやろう!表出ろや!そんなに言うなら殴ってやるよ!離せ!ゴラァ!クビにでも何でもしろや!」
山田君達が必死で葉山君を抑える。
それを良いことにその若者も吠える。
「おー、やってやるよぉ。表に出てやるから勝負しろよ!」
勝負って…。お前なに時代だよ。
その男は完全に生まれて初めて発した言葉っぽい口振りで、自分に酔いながら海斗のいる出口に向かってきた。
海斗は、向かってくる若者を可哀想なものでも見る様な目でチラ見し、クレジットカードを井上に返す。
「もうそろそろ、大人しく帰ってくれませんかねぇ」
と呆れた様に井上に話しかけるが、その態度が気に入らなかったのか、伊藤という若者が海斗の胸倉を掴んだ。