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闇夜に輝く

第54章 勘違い客



それを見た葉山くんが更にブチ切れ、西野さん達を振り切って向かってくるのが見えた。

海斗は胸倉を掴まれ壁に押し付けられながらもこれ以上暴力沙汰にしない方法はないか冷静に考えていた。
そしてふと楽しい事を思いついた。
そうして、

「わかった、わかった。キミの言う通り表に出てやるから」

と言い、海斗が勢いよく身体を捻ると、掴まれていた胸倉の手が離れた。
そのまま率先してエレベーターに乗り込むと、ゾロゾロと後からみんなついてきた。

狭いエレベーター内で、井上という年配の客、伊藤という若者の客、海斗、坂東さん、葉山君、そしてなぜか優矢君も乗り込む。

優矢君はそれまで面倒そうに対応してたのに海斗が何か思いついた事を察したようで、少しウキウキしていた。
葉山君は優矢君には逆らえず、優矢君が抑えつけながら何かをささやくと、何とか我慢して大人しくなる。

そんな不穏なエレベーター内で伊藤が喚く。

「井上さん。安心してください。俺、地元じゃ有名なんすよ。俺が声かければ何十人も集まるんすよ。ヤクザの先輩もいますからね。手口はわかるんす。表に出たらこっちのもんですから。こんなチンピラ、傷害事件になったら絶対に不利ですからね。大丈夫です」

……オイオイ漫画の読みすぎだろ。
お前の地元がどこの田舎か知らないが、こんな早朝の繁華街に仲間を呼べるんなら呼んでみろよと。
それにこの仕事をしてるのがみんなヤクザの関係者だとでも思っているんだろうか。
まぁ、ボッタクリだと勘違いするくらいだしな。

海斗は笑いを堪えてエレベーターが開くのを待った。


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