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闇夜に輝く

第54章 勘違い客



ようやくエレベーターが1階に到着し、みな表に出て行く。
しかし、海斗は右に行き、集団とは離れる。

表に出た葉山君は完全に臨戦態勢で、Yシャツを脱ぎ捨て上半身裸になる。
そして鍛え抜かれた浅黒い身体でファイティグポーズを取る。
しかし優矢君にまた何かをささやかれると、そのまま動かずに伊藤を睨みつける。
伊藤という若者も腰の入ってない形ばかりのファイティグポーズを取るがしきりに

「殴ってこいよ」

と挑発するだけで一向に喧嘩が始まらない。

そんな外の不穏な空気をよそに海斗がコソコソと、とある作業をしていた。
すると次のエレベーターに乗ってきた山田君達と鉢合わせた。

「海斗さん、何やってんすか?」

「ん?これ見て」

「……マジっすか」

「マジだよ〜ん」

その言葉とともに海斗が笑顔で1階のエレベーターエントランスから走って表に出る。

と、そのまま伊藤という若者に向かっていく。



バッッシャーン!!


海斗がバケツに並々と汲んだ水をぶっかけた。

「……えっ?」

伊藤は何が起こったか理解が追いつかずに固まる。

「なんか、一人で勝手に燃えてる奴がいたから消火しといた」

海斗の言葉にスタッフ達は大ウケ。腹を抱えて笑っていた。

伊藤はどうしていいかわからず、文句だけが街に響く。

「てめぇ、何すんだよ!」

と言いつつも、何もしてこない。
海斗はひとしきり笑った後、冷静になる。

「まだ、酔いが醒めないの?もう一回水被る?」

感情のない声でそう言うと、その若者はやっと静かになった。


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