闇夜に輝く
第55章 泥沼の先に
うまくいかない事項に対し、真正面から向き合うことほど嫌なことはない。
楓さんは自分の問題点に向き合っていない。だから黒服が一緒になって向き合わせろと言われている気がした。
「それから山田!」
「はひぃ!」
増田さんに名前を呼ばれた山田君はビビりすぎたのかうまく返事が出来ない。
けれどその山田君の反応に増田さん自身がヤバい雰囲気を出しすぎていた事に気づいたらしい。
増田さんの瞳の色合いが一瞬変わったような不思議な間があった後、いつもの穏やかな演技ががった増田さんに変化していた。
「楓は今、とても難しい立場にある。山田は担当として愚痴の聞き役に徹してくれ。逆にそれ以外はしなくていい。その分海斗が厳しく当たる。山田がひたすら支える。そうやってお前らがタッグを組めば、きっと楓の現状を打開できると俺は信じている。お前らに損な役回りを押し付けてるのは分かっている。けれど、楓は坂東が何年も手塩にかけて育てた大事なキャストなんだ。こんな形で終わらせたくはない。頼む!」
増田さんが頭を下げた。