闇夜に輝く
第55章 泥沼の先に
30過ぎの立場ある人間が、21歳と19歳の若造に何のためらいもなく頭を下げる。
先ほどまでの威圧感とのギャップに、激しく心を揺さぶられてしまった。普段海斗が忘れかけていた感情がズドンと走り抜ける。
これも人の心を動かすための計算なのかもしれない。けれど、そんなことはどうでもよかった。
自分の為ではなく人の為に動く人間には、協力したくなるものなんだと思わされた。
少しの間、坂東さん、海斗、山田君、その場にいた全員が固まってしまった。
そんな中、
「楓を……、宜しくお願いします」
少し遅れて坂東さんが万感の思いを込め、頭を下げた。
店の代表とマネージャーが部下の若造二人に頭を下げている。そんな店が他にあるのだろうか。