闇夜に輝く
第11章 優矢くんの秘密 〜約一年前の出来事〜
1時間後・・・
「優矢も若いねぇ」
そう言いながら楽しそうに優矢の手当てをするおっさん。
ここはクラブニューアクトレスの衣装や備品などが保管してある倉庫兼、呼び込みの人達の待機事務所。
この気の良いおっさんは呼び込みの取りまとめ役で名前は後藤忠志。実はヤクザなのだが、あまりその雰囲気を出さない為、優矢も気付いていない。
かろうじて警察から逃げた優矢と瑠璃はひとまずここに逃げ込み、そのまま床に倒れこんだ。その横に瑠璃も座っていた。
「おっちゃん、ごめんね。いきなり来て」
「いいって。こういう非日常はおっちゃん大好きだから。もう街中で噂になってるよ。早く周りにしゃべりたくてうずうずしてんだから」
「ははは、ホント血の気の多い人達だな。でも助かりました。ありがとう、おっちゃん」
「血の気が多いのは優矢もな。とりあえず増田さんには黙っといたほうがいいんだろ?」
「うん。店関係のトラブルじゃないから言わないで。上の人出てくると面倒だから」
「あいよー。ところでそっちのお姉ちゃんは怪我ないの?」
そう言って後藤は瑠璃を見る。
「はい、大丈夫です。優矢君が守ってくれたから」
瑠璃はそう言いながら、血が滲んだ包帯まみれの優矢の手にそっと自分の手を重ねる。
そのまま潤んだ瞳でじっと優矢を見つめる瑠璃。