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闇夜に輝く

第12章 優矢くんの秘密 〜現在の出来事〜

優矢はリンに手を振って見送りながらスマホのディスプレイを見ると『おっちゃん』と書かれていた。

おっちゃんこと後藤忠志は、1年前まで北条組系の枝のヤクザの一人で、ピンキーという風俗案内所を事務所とし、客引き、スカウト、捨て看板業者、衣装業者のまとめ役にすぎなかった。
しかし、優矢との出来事がきっかけで今では北条組の幹部に格上げとなっていた。
それに伴い最近は街にあまり現れなくなるが、優矢とは昔からの付き合いがあり、親子のような関係は今も変わっていない。

「もしもし。お疲れ様です。おっちゃん久しぶりじゃんか。最近見ないんでパクられたのかと思いましたよ」

「ははは、優矢、元気か?いやー、俺も最近忙しくてね。あんまりそっちには行けてないんだ」

「おっちゃんがこの街にいないとつまんないよ」

「よく言うよ。松山から聞いてるぞ。最近、スカウトの中じゃ頭一つ抜けてるってな。常に女といるみたいじゃねーか」

「いやいや、俺の本業は大学生だって前から言ってるじゃん。でも松山さんにはよくしてもらってます。それに最近、他のスカウト会社の人や他店のボーイさんも気持ち悪いくらい優しいし。松山さんからチラッと聞いたけど、やっぱりおっちゃんが出世したのと関係あるの?」

「んー、どうかな。でもそう思うならこれからちょっと付き合わねーか?」

「いいよ。久々に飲みたい」

「じゃぁジュテームってラウンジ知ってるか?」

「うん。行ったことないけど、場所ならわかります。ってあれ?さっきそこに勤めてるリンって子と会いましたよ」

「相変わらず、女には顔が広いんだなー。まぁ何かの縁だ、指名してやれよ」

「えーと、タダならいくらでもするんですけどね。それと、一応、ピンキーとアクトレスの方にも顔だしてから行くんで1時間後くらいになっちゃうよ?」

「ははは、心配すんな。じゃぁ待ってるからな」

「了解っす。じゃまた」

最近はおっちゃんの立場を気遣い、周りに人がいる時は敬語を使う様に気を付けている。

けれど、電話だと昔からの付き合いのクセが抜けず、タメ語と敬語が入り混じった不思議な感じになってしまう。

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