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蜜の誘い

第16章 優香と美緒

「優香さん…キスして……」

露天風呂に入るやいなや、美緒が身体をすり寄せながら甘えてくる。

「ダメよ…誰かに見られたらどうするのよ…」

職場の同僚であり、恋人でもある美緒と休暇を利用して温泉宿に来ていた。

「私達しかいないじゃない…」

あたりを見回して美緒が頬を膨らませる。
髪をアップにしているせいか、見慣れているはずの美緒の顔が一段と可愛らしく見える。

私は、加藤優香。
もうすぐ33歳になってしまう。
企業向けのコミュニケーション教育のコンサルタントをしている。
30歳で起業して早3年。
仕事もなんとか軌道に乗った。

彼女は、田村美緒。29歳。
女優の吉岡◯帆に似ている美人な子だ。
起業当初から仕事のサポートをしてくれているが、それ以前から恋人同士の関係だった。

「ねぇ…優香さんってばぁ…」

「キャッ!ちょっと…ダメだって…」

白湯のお湯の中で、美緒の手が私の太ももをさすってくる。

「温泉の効能かなぁ?いつもより優香さんスベスベ…」

「んっ?いつも…より?」

「あっ!いつも "以上" の間違いぃ♪」

職業病だろうか…
これでもコミュニケーション力の講師である。
何気ない会話に反応してしまう事がある。
特に最近、年齢的なフレーズには敏感になった。

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