あなたを三番目の男のままにすればよかった
第1章 私と彼の安寧な世界
それでも目覚めないのがじれったくなって、彼を揺らした。
やっと彼の目が、ゆっくりと、うすく開く。
「遅いよ、待ってたよ」
まったくこっちのセリフだった。だけれど、胸が詰まって言い返せなかった。
このまま時間が経たなきゃいい。
閉じ込められたい。
ゆっくり身を起こした彼を、私は抱きしめた。
「ごめんね、待っててくれてありがとう」
この身が焦げたほどの激情を抑え付けて、ただ笑って言って身を離す。
あー飲まされた、と彼が頭をかいて。
帰ろうか、と私は笑いかけた。