ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第9章 二人だけの卒業旅行
その先に進めない理由は色々あった。
圭太がまだ高校生だったこと。
僕が就活の真っ只中だったこと。
何よりも、僕たちが……
同性だったこと……。
慎「あの…」
「はい?」
慎「お、俺は別に構わないんすけど、二人っきりで…しかも、千陽さんの部屋で会ってるなんて圭太に知れたら何て言われるか…」
慎之介くんは落ちつかなげに部屋の中をうろうろと歩き回った。
「だって、圭太くんに内緒のお願いをしようとしてんだもん。見られたらヤバいじゃない?」
慎「そうっすけど…」
とにかく座って?と、慎之介くんに座るよう目で合図する。
慎「で?…何を聞き出せばいいんすか?」
「う…うん。あのさ、前に圭太くんが男も好きかもしれない、って、言ってたじゃない?」
慎「え?…あ…い、言ったっけ…かなぁ?」
座っても、相変わらず落ち着かない慎之介くん。
「その…経験…あるのかな?って。」
慎之介くんは、せっかく飲んだコーヒーを噴き出してしまった。
「だ、大丈夫?」
慎「すっ…すいません!」
「気にしないで?」
慎之介くんは僕がテーブルを拭いている間、ティッシュを山のように鷲掴みにし、顔やら手やらを拭いていた。
拭きながら、身を乗り出すようにして声を潜めた。
慎「多分ですけど…ない…と思います。そんな噂も聞いたことないし。」