ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第9章 二人だけの卒業旅行
不意に伸ばされた彼の手が、ぎこちなく俺の頬をなぞる。
千「圭太くん、キスして?」
ちゅ、と唇を合わせるだけのキスをすると彼は不満そうに眉根を寄せた。
少しだけ体を起こし、俺の首に両腕を巻き付けるようにしがみつき顔を寄せると、俺の下唇をちゅっと吸い上げ囁いた。
千「舌…出して?」
「え……?」
千「早く…」
言われるまま舌を出すと、薄く開かれた唇から覗く赤い舌にまんまと絡めとられてしまった。
しばらく、甘くて生暖かな唾液を互いの舌の上で転がしあった。
薄目を開け彼の顔を見る。
ほんのり赤みが刺した白くてふっくらした頬が可愛らしくて、思わず彼の背中に腕を回しきつく抱きしめてしまう。
苦しそうに息をしながら離れた唇に「好きです」と囁いてやると、泣きそうな顔で俺を見あげた。
千「僕も…」
浴衣の袖から覗く細い腕に力強く引き寄せられ抱きしめられる。
「でも、優しく出来なかったらゴメン。」
千「それはヤだ。」
「え?」
思わず体を離してまじまじと彼の顔を見つめた。
千「…ウソ。でも、努力はして?」
「出来るだけガンバる…けど…」
千「僕も…ガンバるから…。」
「何ガンバんだって!?」
千「さあ…?」
俺のツッコミに笑いあった後はまた、貪るようなキスに溺れていった。