
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第10章 分かれ道
「ごめん…。」
顔を逸らした君に体を預けるように凭れかかる。
ゆっくり流れる景色を見ながら、何気に触れた指先を絡め合う。
温かくて、優しくて、
離したくなくなるけど、
圭「さ、降りよっか?」
「…うん。」
離れない指先。
人目があるから離そうとしても離してくれなくて、仕方なく彼に従う。
…フリをする。
もし、回りから変な目で見られたら君のせいにしよう。
君が離してくれなかったから僕が恥ずかしい思いをしたんだよ?って。
それでも君は、いいじゃん、別に?って、離してくれなさそうな気がする。
そうだね、君は。いつだってそう。
出会った頃の僕たちは、君の前に僕がいた。
でも今は、
僕の前に君がいる。
そして、僕らの歩いて行こうとしている道に僕が二の足を踏んでいると、早く来なよ、と手を引っ張る。
その力があまりにも強くてよろめいてしまうけど、ちゃんと支えてくれるから安心しちゃうんだ。
いいんだ、って、
このまま二人でこの道を歩いていってもいいんだ、って思い込んでしまうんだ。
この先に別れ道があるなんてことも忘れて…。
