
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第10章 分かれ道
千陽side
帰りの電車の中。
頬杖をつき、僕はずっと窓の外を眺めていた。
窓の外は海。
春の薄曇りの空の下、霞がかった大海原が広がっていた。
しばらくして、肩に重みを感じて横を見ると、
僕に体を預けて眠るあどけない寝顔に頬が緩んだ。
電車が緩いカーブに差し掛かって、先頭車両が車窓から見えた。
乗り換えの駅まで、あと少し。
乗り換えて、僕らの降りる駅まではまだ大分あと。
その駅を降りてからは、別々の方向に帰ってゆく。
当然と言えば当然だけど行き着く先は違う場所。
近い将来、僕と彼が行き着く場所も、多分…
例えこんな関係になったとてそれは変わらない。
乗り換えの駅が近いのだろう。
窓外を流れる景色の速度が余裕で目で追えるぐらいに緩やかになる。
僕は、隣で規則正しく寝息を立てる彼をそっと揺り起こした。
圭「早っ!!もう着くの?」
大きなアクビをしながら目をごしごし擦り、窓の外を見やる君。
今、目の前にある幸せに泣きそうになる。
圭「ん?俺の顔に何かついてる?」
「男前だなあ、と思って?」
瞬間赤くなった君の顔が近づいてきて唇に何かが触れる。
圭「照れんじゃん?面と向かってそんなこと言われたら。」
