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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第12章 薔薇を纏った悪魔



千陽side


落ち着かない…。



照明を落とした、静かなクラシックが流れる落ち着いた雰囲気のレストランなのに、



…落ち着かない。



居酒屋やファミレスみたいなざわめきもなくて、



フォークやナイフが微かに食器に触れただけの音がやけに大きく聞こえた。



「……。」



目の前の魚介の料理…



あ、確か、なんとかのカルパッチョ、とか言ってたっけ?



そのなんとかのカルパッチョを一口、口に運びながら


目の前で、ただ、ひたすらに慣れた手つきでフォークとナイフを駆使するイケメンに釘付けになっていた。



圭「ん?どうしたの?」


「え?」


圭「あんま、食べてないみたいだから。」


「そんなこと、ないよ?」



慌てて笑顔で取り繕う。



圭「旨い?」


「…ん。」


圭「…よかった。」



これって…もしかして…もしかしなくても、この間の誕生日のこと、気にしてる?



だとしたら、何だか悪い気が…



謝ろうと、口を開きかけた時だった。



「圭太…だよね?」



恐る恐る問いかける女性の声。



その声に反応し顔を上げた圭太の手からフォークが溢れ落ち、皿の上で甲高い音を響かせた。



圭「え…な…んで?」


「圭太こそ…ホント偶然!こんなところで会うなんて!」



その女性は、僕の姿なんてまるで目に入っていないかのように、



嬉しそうに圭太の手を握りしめた。



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