ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第12章 薔薇を纏った悪魔
絶頂に達したあと、崩れ落ちるように倒れ込んでくるあなたを抱き止め、そのままベッドに寝かせた。
安らかな顔。
汗で貼り付いた髪を掻きあげ頬を指でなぞる。
ごめん…こんなにもあなたが心乱すなんて思ってもいなくて。
彼女とのことはもう過去のこと、終わったことなんだ、と言ったところで収拾がつくような雰囲気じゃなくて、
『失礼ですけど男性ですよね?』
彼女は何気無くその一言を口にしたのかもしれない。
でも彼には…千陽さんには「男なのに…」という侮蔑的な意味合いに聞こえたのだろう。
みっともなく動揺していた俺にも苛ついたことだろう。
薄暗く人通りは少なくとも大通りの脇での挑戦的なキス。
誘われるままホテルへついて行くと、人形のように扱われ、欲望に任せて俺の上に乗ってきて腰を振り果てた。
「ごめん…」
言葉を口移しするようにキスした。
瞼がぴくぴくと動いて、目を覚ましたのかと思ったら、くるりと背を向けた。
そんな彼の体を背中から抱き締め首筋に顔を埋め、香りを吸い込む。
彼のイメージに違わない甘い香りにうっとりした。
俺はあなたが好き…。
だから、俺の爛れた過去なんて知られたくない。
ただただあなたのことが好きでたまらない、そこらへんにいる年下の男でいたいんだ。
でも、見て見ぬフリを決め込めこもうとすればするほど過去は、俺に重くのし掛かろうとした。