
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第13章 水に挿した一輪
「え……何言って……!?」
刹那、薄くて小さな唇の端が不気味に上がる。
雅「だって、皆に追及されてた時、ハッキリと顔に出てたから。」
「あ……」
雅「でも安心して?私も同じだから。」
「どういう…こと?」
雅「私も…今女の人と付き合ってるんです。」
巻き付けられる白く細長い腕。
雅「私……昔から男の人がダメで。近くに来られるだけで気持ち悪くなるの。」
でも、と、嫌悪感丸出しの表情から一変して、僕を見上げる目は熱を含み潤んでいた。
雅「先生は違う……。」
猫が飼い主に甘えるようにうっすらと微笑みながら僕の胸元に頬を擦り寄せてくる。
雅「男の人なのに男の人を愛してるなんて何だか…」
体に巻き付けた腕を解いて僕の頬を手のひらで包み込んだ。
雅「何だか自分を見ているみたいで落ち着くの。」
僕は、吸い寄せられるように近付いてくる彼女の顔をただ見ていた。
ねっとりと、自分の唇に吸い付く彼女の唇を感じても振り払うこともできずにただ、
されるがままになっていた。
