
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第14章 迷宮の中で
生まれて初めて触れた女性の唇。
その、あまりの柔らかさに吃驚してしまって、彼女の体が僕を解放してくれたにも関わらず、呆然と立ち尽くしたままだった。
雅「うふふっ。もしかして、女の人は初めてですか?」
薄っすら微笑みながらなぞられる指先の感触に我に返った僕の顔が、羞恥と怒りで熱を持つ。
雅「でも、安心して?今日のことは誰にも言いません。」
「…脅すつもり?」
彼女が意味深に笑う。
雅「先生が、こうして時々会ってくれるなら、ね?」
「君、さっき女性の恋人がいる、って?」
雅「結婚してるならいざ知らず、恋人なら何人いたっていいじゃないですか?」
「僕、男なんだけど…。」
雅「そうですか?全然『男』を感じませんけど?」
僕の手を取り、夢見るような表情で頬を擦り寄せ撫で始める。
雅「私…先生の手って好き。女の人みたいに綺麗でしなやかで…。」
さすがに怖くなってしまって、慌てて手を引っ込めると、お気に入りの玩具を取られた幼子のように泣きそうな顔になった。
雅「でも…先生はその綺麗な手で男の人と抱き合っているのよね?」
