
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第14章 迷宮の中で
ここではダメだ、と言っておきながら、押し戻そうとする腕に力が入らない。
どころか、すがり付くように圭太の服を掴み、奪うような口づけに酔いしれていた。
やがて暗さに慣れた目にいつも子供のように屈託なく笑う彼の、欲に満ちた雄の顔が映って、
言い知れぬ欲情に掻き立てられた僕は、無我夢中で彼の髪に手を差し入れ引き寄せその唇を貪った。
圭「千陽さ…」
「ここで抱いて…」
互いの唇を繋ぎ合う糸が、窓から差し込む月明かりを受け銀色に煌めきながら消えてゆく。
圭「でも…」
「構わないから…」
それでも、腕を膝裏に差し込まれそのまま体を持ち上げられる。
落とされないようにしがみついた彼の体からはマリンフローラル系の香りが漂う。
気付いたら、ずっと君からはこの甘くて爽やかな香りがしていた。
圭「今…笑った?」
「香水。女の子みたいな香りだな、と思って?」
圭「わ…悪いかよ?」
「そんなことない、悪くない。好きだよ?僕は?」
圭「香り……だけ?」
「なんて……言って欲しいの?」
ベッドの上に座らせた僕の隣に腰を下ろして見つめる目があまりに真剣そのもので、
可笑しくてつい吹き出してしまった。
