ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第1章 天使…時々、小悪魔?
圭太side
やべっ、日付変わっちまう。
俺は、今しがた赤に変わった信号と、
シルバーの腕時計を見比べながら舌打ちした。
日付が変わるまであと三分。
ちらりと右腕に目を遣る。
マジで早く青になんないかな?
その腕にしかと握られた、白い、薔薇の大きな花束。
すれ違う人誰もがその大きな花束に目を止め溜め息を漏らす。
ちょっと鼻高々ではあるけれど、
…ちょっと恥ずかしい。
喜んでくれっかな?
今日は、大好きなあの人の誕生日。
ホントは余裕で間に合ってたんだけど、
どうしてもそれが欲しくて、でも、意外に見つからなくて花屋を何軒も探した。
香り高く咲き誇る白い花。
何色に染まることなく、
そして綺麗で…
そう、まるであの人を彷彿させる。
気づいたら全部買い占めてて、
結果、この大きさ。
………この注目度(汗)。
やがて、歩行者信号が青に変わる。
俺は羽織っていた上着を脱ぐと、
白いストライプを全力で駆け抜ける。
角を幾つか曲がるごとに疎らになっていく人影。
もう一つ、あと一つ、
あの角を左に曲がれば、
大好きなあの人の待つ、部屋の灯りが見えてくる。