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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第20章 美少女の秘密



翌朝目が覚めると既に圭太の姿はなく、部屋の中は、夕べのことは悪い夢だったのだ、と思わせるぐらいの静寂に包まれていた。



でも、少し身動ぎしただけで腰に走る鈍い痛みが、夢ではなかったのだと教えてくれた。



「行かなきゃ…」



重い腰を引き摺るように僕は家を出た。





学校に着いてから俄に痛みが強くなったような気がして、午後の授業まで保健室で休ませもらうためドアをノックしようとした時だった。



中から言い争うような声が聞こえてきて、思わずドアの前で足を止めた。



一人は恐らく田嶋先生。



そして、もう一人は…



「どうして…どうして分かってくれないの!?私、真剣なのに…」


「だからっ!!何度も言ってるじゃないの!!勘違いだ、って?」


「そんな…ひどい。ひどいわ律子さん。私…私、こんなに律子さんのこと…」



この声は……?



「加納さん、お願いだから聞き分けてちょうだい。」



突然、ドアが勢いよく開いて加納雅が姿を現した。



雅「千陽……さん?」



泣き腫らした顔の美少女と目が合う。



律「島崎……先生?」



『私が一方的に好意を寄せてる人。』



それ、って、まさか……



「田嶋先生…これは…?」


雅「…失礼します。」


律「加納さん待って!!まだ、話が終わって…」



若い彼女の姿はあっという間に僕らの視界から消え去った。



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