
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第21章 薔薇と百合の一夜 ①
雅「どうしてなのかしら…ね?」
言葉を失い、ただ立ち尽くすだけの僕を宥めるように、彼女が髪を撫でながら語りかけてきた。
雅「普通に男女の恋愛ならこんなに思い悩まないのに、どうして同性だったのかしら?」
僕の髪を滑り落ちてゆく優しい指先に、いつの間にか僕の涙が頬を濡らしていた。
雅「千陽さん、てホント泣き虫ね?」
そう言って、涙を受け止めてくれる優しい唇に僕は、涙を止める術を忘れたかのように涙を流し続けた。
雅「それに素直だし、真面目だし。おまけに…」
再び塞がれる唇。
そのキスの味は自分の涙の味がして、少ししょっぱい気がした。
雅「おまけに綺麗だし…。」
「綺麗だなんて…」
雅「綺麗よ。千陽さんは。」
僕を見上げる瞳を覗き込むと、形のいい唇の両端が上向いた。
雅「だって…恋をしてるんだもの。」
涙が……
僕の頬を伝って彼女の頬を濡らした。
雅「温かい…。千陽さんの涙。」
「ご…ごめ…」
慌てて拭おうと伸ばした指先が彼女に捕まり、唇の中に吸い込まれてゆく。
「あっ……」
生暖かくて、ぬるりとした舌が指先に絡まってきて、僕は思わず声を上げてしまった。
