
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第21章 薔薇と百合の一夜 ①
上目で僕を睨み付ける彼女の双眸。
なまじ綺麗なだけに、その迫力に気圧されてしまう。
雅「私の律子さんに近づかないで。」
詰め寄られ、壁際へと追い込まれる。
雅「あの人は私の全てなの。もし、あの人から私を遠ざけるようなことをするなら、例え、千陽さんとはいえ容赦しないから。」
「っ………」
雅「返事は?」
「あ…いや…でも…」
さらに彼女の顔が近づいてきて、吐く息の温度が分かる距離になる。
雅「ね…言って?千陽さん。」
突然、細い両腕で顔を掴まれ唇に唇を押し付けられる。
雅「私から律子さんを奪わないで…」
離れた唇から言葉が零れ落ち、涙が頬を濡らす。
雅「私、あの人がいないと生きていけない。」
重くて……重くて深い愛の言葉。
雅「千陽さんだってそうでしょ?恋人がいなくなっても生きていけるの?」
「ぼ…僕は…」
もし、そうなったら…
もし、そうなったとしても、っていつも心のどこかで思っていた。
でも…
雅「自分は大丈夫、なんて綺麗事言わないで。」
見透かすように見つめる瞳に、言葉が出てこない。
雅「あなたは…生きていけない……きっと…。」
そう。君の言う通りだ。
彼を失うことになったら僕は多分、
生きていけない……。
