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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第23章 月夜に霞む



圭太side


外回りでクタクタな体に鞭打つように、駅から家までの歩いて三十分の道のりをひたすら歩いた。



ここ最近ではいつもより早い帰宅。



千陽さん…帰ってるよな?



犯すみたいに千陽さんを抱いたあの日から、俺は朝は一本早い電車に乗り、夜は仕事関係と称しててっぺんを回ってからこっそり帰宅していた。



それでも、そんな俺を待っていてくれたらしく、晩飯のおかずはまだ温かった。



が、その日はいつもと違っていて、真っ暗な部屋のドアの鍵を開けると、暗闇の中からニャア、とベルが出迎えてくれた。



今日は…遅いんだな?



部屋の明かりをつけてから、ご主人様の代わりに出迎えてくれたベルの頭を撫でた。



「お前、一人か?」



必要以上に纏わりついてくることから察するに、腹が減ってんだろうとベルのフードを皿に入れた。



「お前なあ、一応女子なんだからあんまがっつくなよ?」



ガツガツと、一心不乱にかぶり付くベルの艶々した体を撫で、ため息をついた。



ふと、思い出したようにスマホに目を通すと、いつの間にか来ていた千陽さんから「今日は遅くなるから」とのメッセージ。



心のどこかでホッとしている反面、どこか物寂しさを感じている自分に心底嫌気が差した。



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