
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第23章 月夜に霞む
「ね…千陽さん。」
千「何?」
甘えるように、俺の腕の中で微睡む彼に話しかけると、気怠げに俺を見上げた。
「さっきまで何処で何してたの?」
途端、甘く見上げていた彼の目が翳り、俯いてしまう。
千「シャワー、浴びてたんだけど?」
「じゃなくて…帰ってくるの、遅かったじゃん?」
千「…仕事が立て込んでて…だから…」
「そう…」
美術の教師、って、そんな忙しかったっけ?
俺はさっきの質問で、機嫌を損ねたかも知れない腕の中の愛しい人を抱きしめた。
…いっつも俺の方が午前様のクセに、俺ってヤツは…
千「どうして?」
「いや…珍しいな、と思って?」
千「いけない?」
「ごめん。深い意味はないんだ。」
千「じゃあ何なの?いつもは圭太の方が遅いのに、僕がたまに遅いとダメなの?」
「そういう意味じゃないけど。怒らせたんならごめん。」
徐に、彼が俺の腕の中から這い出し、俺に覆い被さってきた。
千「ダメ…許さない。」
俺の頬に添えられる綺麗な指先。
舐め回したように濡れた唇が近づいてきて俺の唇を塞ぐ。
千「今夜は寝かせてあげないから。」
