ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第23章 月夜に霞む
東の空が白み始めた頃、興奮冷めやらぬ俺は久しぶりに煙草が吸いたくなって、
腕の中で気持ち良さそうに寝息を立てている彼をそのままにベッドから抜け出した。
「ニャア。」
寝ぼけてるのか、腹が減っているのか、ベルが俺の足に纏わりついてきた。
「どうした?俺らが激しすぎて、お前も興奮して寝れないのか?」
俺は小さくニャアと鳴きながら後についてきたベルとベランダに出、タバコに火を付けた。
「満月だったのか…」
…だから俺ら、昨夜はあんなにも変だった。
それにしても…
抱くほどに、あの人を遠くに感じるのはどうしてなんだろう?
煌々と輝く月に向かって紫煙を吐き出す。
ふと、足元に目をやると此方を見上げていた青い瞳と目が合った。
まるで、青く透き通る南国の海のような目と。
「綺麗だな…お前の目。」
煙草を口に咥えてしゃがみこみ、ベルを抱き上げた。
「お前…もし、俺と千陽さんが別れたらどうする?」
しばらく、じっと俺の目を探るように見つめてのちベルは俺から目を逸らした。
そして、しなやかに体をくねらせながら俺の腕の中から逃れると、灯りを落とした闇の中へと消えていった。