ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第4章 君の背中には羽がある
圭太side
千「……。」
ちょっとからかいすぎたかな?
急に黙り込んでしまった背中の彼に申し訳ない、と思いながらしばらく歩いてゆくと、あ、と、小さく声をあげた。
千「自転車…」
そう言えば、乗ってたな?
彼をおぶったまま、彼の拉致られた場所まで歩いて行く。
千「あ…あった…」
自転車がまだのその場所にあったというのに、彼の安堵の声はすぐに落胆の色を帯びていき、
それは、粉々に割れたライトの破片を見た途端にさらに色濃くなる。
千「直さなきゃ…。」
新品なのかどうかは知らないけど、まだ、真新しい感のする自転車。
綺麗に磨かれていて、目立つ傷なんて見当たらない。
「ちょっと、降りててもらっていい?」
返事はなかったけど、
落ち込んでいる彼を降ろして座らせ、少し離れた場所へ移動し尻ポケットからスマホを出した。
「もしもし、俺だけど?」
『何だよ?こんな時間に?』
「ワリぃ。ちょっと、頼まれてくんないかな?」
ほんの数分電話でやり取りしたあと、
彼と、彼の切なそうな視線に晒されている自転車が転がる場所へと戻った。
何か…スゲェ落ち込んでる。
足を抱え込んだまま一言も発しなくなった彼の目の前にしゃがんだ。
「のさ、ちょっとだけお願いがあんだけど?」