
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第25章 分水嶺
どこか、
釈然としない気持ちを抱えたまま時間だけが過ぎ、
もう少ししたら午後の授業が始まるという時、学校に一本の電話がかかってきた。
「え?僕に……ですか?」
「ご親戚だ、という女性から…」
実家には僕が教師になったこと以外、
この学校にいることさえ伝えていない。
特に隠している訳でもないから調べればすぐに分かることだけど。
「……お電話変わりました。」
『こんにちは、嶋崎センセ?』
「君は確か…」
『あら、嬉しい。覚えててくださったんですか?』
「まあ…」
圭太の……
「あの…どういったご用件でしょうか?」
『あ、そっか。先生、仕事中でしたね?』
電話口でクスクス笑う。
その笑い声が、鼓膜にねっとりと纏わりついてくるようで心がざらついた。
『先生、って今晩、お時間あります?』
「は?」
『お食事でも一緒にどうか、と思いまして?』
突然何を言い出すのかと思ったら…
『好みが似た者同士で語り合いたいと思いまして?』
「はあ…」
まったく…
この人は一体何を考えているんだろう……。
