ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第5章 秘色
圭太side
あの人のことをそういう対象として見ていた、って自覚してからは、
あのコンビニに余計に行きづらくなってしまって、
いろんな意味で自分をもて余していた。
何だかんだでテストも終わり、何とか赤点は免れたものの、胸を張って頑張りました、なんて言えるものではなかった。
定期テストの全日程の最終日、
帰りに例のコンビニの前に差し掛かったものの、
後ろめたさから遠目から覗くことさえできずに足早に通りすぎてしまった。
そんなこんなで、本当にあっという間に一ヶ月が過ぎようとしていたある日、偶然、外回りの掃除をしていたあの人の姿を見かけた。
彼は振り向き、店内から出てくる客に笑顔で声をかけていた。
久しぶりに見るその笑顔に釘付けになってしまう。
すると、不意に彼が振り返ってこちらを見た。
あ…
俺の姿に気づいたのか、
一瞬、ホッとしたような、柔らかな笑みを浮かべた。
が、次の瞬間、それが勘違いだったのか、と思わせるぐらいの早さで彼は背を向け、店内へと戻っていった。
ビックリした…。
それからの俺は、口から飛び出てきそうなぐらいにバクバクする心臓を抱えたまま、自宅寝室のベッドにダイブした。