ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第6章 そして、惹かれていく。
千陽side
「えっと…この辺かな?」
僕はある家を探して、初めて来る道を歩いていた。
でも、段々と住宅街からは遠ざかっていって、
本当に、この住所であってるのかが不安になってきて、
向かいからやって来る、自転車に乗った数人の小学生ぐらいの男の子たちを呼び止めた。
「ねぇ、君たち、ちょっと聞いていい?」
先日、圭太くんが持ってきてくれた封筒に書かれた住所がこの辺であっているのか聞いてみた。
「あっ!!ここ、俺の家じゃん!?」
一人の男の子が声を張り上げた。
「案内してあげる。」
その子は友だちに先に行ってて、と自転車から降り、僕の前を歩き出した。
「ここだよ?」
『大木バイクショップ』。
男の子はそんなに大きくはないけど、こじんまりしたショールームにピカピカの大きなオートバイが置かれた店の中に入っていった。
「ちょっとここで待ってて?」
男の子の言うとおり少し待っていると、
彼は少し怖そうな、髪をオールバックにした男性を連れてきた。
「父ちゃん、この人だよ?」
「ふーん?」
その男性は眉をしかめ、僕のことを頭から足の先まで嘗めるように眺め回した。