ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第6章 そして、惹かれていく。
な、何?
「お客さんだよ?」
男の子はにこにこしながらオールバックの男性を見上げた。
「あ…あの、僕、直江圭太くんの伝で自転車の修理をお願いしてまして…その修理代を…」
お…親子だったんだ。
男性は得心したように頷くと、隣にいた男の子に何やら耳打ちした。
「うん、分かった!」
元気よく駆け出してゆく男の子を見送ると、男性はぺこりと頭を下げた。
「すんません。今、呼びに行ってますんで。」
「は、はあ…?」
意味も分からず生返事をすると、
奥から賑やかな会話が聞こえてきた。
「もー、にーちゃん、早く早く!」
「ったく…何だよ、日曜の朝っぱらから…」
奥からスエット姿の若い男性が、さっきの男の子に手を引かれて現れた。
それを見たオールバックの男性が顔を硬化させ、彼の頭を思い切り叩きつけた。
「いって…!何すんだよ!?このくそ親父っ!!」
「何すんだじゃねぇ!!もう昼過ぎだぞ!!いつまで寝てんだこのタコ!!」
客だ、とばかりに、オールバックの男性が僕を顎で指し示す。
「お休みのところごめんなさい。僕、直江圭太くんを通じて自転車の修理をお願いしてた者なんですけど?」