ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第6章 そして、惹かれていく。
ダメ…やっぱり。
目をぎゅっと閉じ、両手で自分の体を抱きしめてみてもその震えは治まらない。
治まらないどころか、
全身が熱を持ったように熱くなってきて頭がくらくらした。
『千陽、よく頑張ったな?』
いや……やめて。
そんな優しい声で、
優しい笑顔で僕を呼ばないで…
耳を塞いでも、その声は直接頭に響いてくるようで、
そのままその声は、頭にこびりついたまま離れてくれない。
やっぱりダメだ。同性の、しかも、血の繋がった人を好きになるなんて、
自分はどうかしてる…。
でも、
『いいじゃない?好きなら好きで。相手はもうこの世にいないんだから感情なんて表に出ようがないじゃない?』
そっか…そうだよね?
自分さえ黙ってたら、口に出しさえしなければ…
幸い、回りは僕の過去を知らない人ばかりだし。
何のためにこんなところにまで来たの?
男の人に恋してしまった、汚ならしい自分を忘れるためじゃない?
そう、前向きに切り替えたつもりだった。
なのに過去は、思いもかけない形で僕に牙を向けてきた。