ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第8章 もっと、君を知りたくて。
千陽side
圭「キスしてもいいですか?」
驚いて顔をあげると、
そこにはトマトみたいに真っ赤な圭太くんの顔があって、
さっきまでの肉食獣はすっかり影を潜め、リスかハムスターみたく忙しなくキョロキョロと視線を泳がせていた。
何だか可愛い…。
「いいよ?」
予想外の僕の返事に、圭太くんの顔は例えようがないぐらいさらに真っ赤になって、
僕と目を合わせようとしない。
圭太くんの首回りに腕を回し、しがみつく。
千「目…閉じて?」
かく言う僕も、少し恥ずかしかったけど、
微かに触れたと分かるぐらいのキスをした。
すると圭太くんは少し、物足りなさそうな顔で僕を見た。
「そんな切なそうな顔してもダメ。いきなり僕を押し倒してきた罰だからね?」
圭「…すいません。」
「でも…」
諭すように、シュンとする頬にそっと触れた。
「今日のところは許してあげる。」
すると、彼の顔が誉められた子供のように綻ぶ。
こんなに表情豊かだったなんて、
初めて会った時は想像もできなかった。
もっと…
もっと君のいろんな顔が見てみたい。
もっと…もっと君のこと…
知っていきたい。