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淡雪

第7章 アイドルの世界

店を出て車に乗り込む。

『家どこ?』


『横浜です』


『方向一緒で良かったわ』


田村くんは車を発進させた。


『なあ、何でプロ野球行かなかったの?』


『あー...


 田村さんは不思議な力って信じます?』


僕は敢えて正面をむいたまま言葉を発する。


『不思議な力?


 ...信じてるよ』


少し間をおいて言葉を紡ぐ田村くんは何かを思い出しているようでもあった。


『実は、僕は本当は野球の才能なんて無いんです。

 野球は好きで小学生から続けてました。

 将来は野球選手になりたいなんて淡い夢を見ながら。

 高校1年のある日...』


僕はあの時のはなしを田村くんにしていた。

今まで誰にも話したことのない摩訶不思議な話を。



『彼女が星蘭の学生なのはわかってるんです

 制服を着てたから。

 なのに誰なのかわからない。

 ああゆう事件ですから敢えて名乗らなかったのかもしれない。


 だからそれっきり。

 僕は真実も聞けず、お礼も言えず

 宙ぶらりんなんです』

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