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淡雪

第7章 アイドルの世界

『なんでこの世界にはいったの?』


僕はあまり考えていなかった理由を思い出す


『実は会いたい人がいるんです。

 会ってお礼を言わなければならない人が。

 僕はその人のお陰で甲子園に出られるピッチャーになれた。甲子園で活躍すればもしかして会いに来てくれるんじゃないかと思って毎年頑張って出場したんですが...

 もしかしたら野球に興味がなかったのかもしれない。

 もっと有名になればもしかしたら会えるんじゃないかって...』


田村くんはじっと俺を見ている。


『なんかセンチな話だな』


『まあ...最初はいろんなことが聞きたいだけだったんですけど、会えないもどかしさと時間のせいで勝手に片想いみたいになってしまって...

 彼女の顔もわからないのに』


『彼女ってことは、女か...』


田村くんの顔が一瞬歪んだ気がした。


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