淡雪
第10章 想いを遂げる
病院の廊下を走る。
すれ違う看護師に怪訝な目で見られることも気に止めずある部屋を目指した。
目的の部屋の前で止まりノックをしようとして中から話し声がしていることに気づく。
ーー渡部さん?!
漏れ聞こえる声に耳をそばだてた。
「彼女は数日で目覚めるでしょう。
しかしあなたのことは覚えていないかもしれない。
彼女は自分の命を脅かすほどの力を出したとき長い眠りにつきます。
そして目覚めたときはその対象の人を覚えていない。
それは、彼女の防御かもしれません。
彼女のなかに残った感情を再び出さないためにその人を忘れ近づくことはない。
今までもそうでした。
だから驚かないでくたさい」
医師の静かな口調が響いていた。
「そうですか...
では私はどうすれば?
彼女にどんなお返しができますか?」
渡部さんも静かに問い返していた。
「何も。あなたをどんな風に救ったのかはわかりませんが、彼女があなたを覚えていない以上は敢えて近付かないでください。
それが彼女を守ることになります」
ーー彼女が自分の命を脅かすほどの力を発揮したとき、彼女はその相手を忘れてしまう?!
僕は頭の中で医師の言葉を反芻した。
ーーだから彼女は僕を覚えていなかった。
多分、あの事件のことも...
だから探しだすことも
探してもらえることもなかったのか
だとしたら
彼女が覚えていないとしたら...
彼女に近付づいては いけない?!
やっと気付いたのに!
「そうですか。
わかりました。
それが彼女を守ることになるのなら...」
渡部さんの口調はとても穏やかだった。
すれ違う看護師に怪訝な目で見られることも気に止めずある部屋を目指した。
目的の部屋の前で止まりノックをしようとして中から話し声がしていることに気づく。
ーー渡部さん?!
漏れ聞こえる声に耳をそばだてた。
「彼女は数日で目覚めるでしょう。
しかしあなたのことは覚えていないかもしれない。
彼女は自分の命を脅かすほどの力を出したとき長い眠りにつきます。
そして目覚めたときはその対象の人を覚えていない。
それは、彼女の防御かもしれません。
彼女のなかに残った感情を再び出さないためにその人を忘れ近づくことはない。
今までもそうでした。
だから驚かないでくたさい」
医師の静かな口調が響いていた。
「そうですか...
では私はどうすれば?
彼女にどんなお返しができますか?」
渡部さんも静かに問い返していた。
「何も。あなたをどんな風に救ったのかはわかりませんが、彼女があなたを覚えていない以上は敢えて近付かないでください。
それが彼女を守ることになります」
ーー彼女が自分の命を脅かすほどの力を発揮したとき、彼女はその相手を忘れてしまう?!
僕は頭の中で医師の言葉を反芻した。
ーーだから彼女は僕を覚えていなかった。
多分、あの事件のことも...
だから探しだすことも
探してもらえることもなかったのか
だとしたら
彼女が覚えていないとしたら...
彼女に近付づいては いけない?!
やっと気付いたのに!
「そうですか。
わかりました。
それが彼女を守ることになるのなら...」
渡部さんの口調はとても穏やかだった。