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淡雪

第11章 小さな嫉妬

「坂井くん、優しいね。
 相手の子、初めてが坂井くんで良かったね」

そういって璃子さんはそっとシチューを口に運んだ。

「なんで?」

「ん?」

璃子さんはゆっくり顔をあげた。

「自分の感情モロだしにして
 相手のことも考えずに強引にヤりたがる男って多いから。
 アニメやAV鵜呑みにして、過激なことヤりたがる男もいるし
 それで女が喜ぶと勘違いしてる男も多いから」

「そうなの?」

「そうよ。
 下手だと思われたくないとか
 妄想が現実と区別できなかったり
 そういう知識ばっかり詰め込んで
 やみくもにイカせたいとか

 イクッって
 ただ突けば、いじればイクわけじゃないの。
 相手が自分を思って自分が相手を思って
 気持ちいいかな?どうかな?
 って相手の顔を見ながら
 探りながら高めていくから
 気持ちよくなるし
 イケるのよ。

 テクニックじゃないの。
 気持ちなのよ」

「そうなの?」

「そうよ。
 坂井くんが私を想って気持ちよくしてくれようとするから、私はイクの」

僕はちょっと嬉しくなった。

「潮も吹かせちゃったしね」

「ほんとよ。
 気が狂うかと思ったわ」

璃子さんが恥ずかしそうに微笑んだ。

なんか、いろんなことが馬鹿馬鹿しくなった。
たしかに璃子さんの過去が気にならない訳じゃないけど、いまの璃子さんをイカせてるのは俺だけなんだ。

ーーなんだ、そっか。そっか。

僕は単純だ。

結局璃子さんからは何も聞けてないけど

一番聞きたかったことが聞けた。


僕は嬉しくてシチューを貪るように食べた。

璃子さんが笑ってる。

それだけで幸せなんだ。


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