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淡雪

第13章 愛されること

窓のカーテンをそっと開けてエントランスを出てきた彼を見送る。

振り向いて見上げる彼。

とびきりの弾けそうな笑顔を向けてくれる。

私もにっこり笑って小さく手を振る。

大きく腕を左右に振って

「行ってくる!」

と口許が動く。

私は頷いて彼を見送る。

マンションの前に停めてある車から出てきたマネージャーさんが私を見つけて怪訝な顔を向けた。

サッとカーテンを閉める。

隠れる必要はないとは思うけど
どこか負い目みたいなものを感じてしまう。


ーーそうよね。
  彼はアイドルだから私の存在は邪魔なだけ

わかってる。

だけど、この愛を確かめてみたい。

今までずっと誰かを深く愛することも
愛されることも避けてきた。

だから今はこの愛に流されてみたい。

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