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「いや...その...」

僕は言葉がうまく発せず口ごもる。

「なんだよ。
　はっきり言え」

田村くんの言葉に

「あの、田村くんは璃子さんのこと好きなんですか？」

言っちゃった

「...
　ああ　好きだよ」

やっぱり...

「だからといって付き合うとか恋愛する
　って対象ではないかな。

　大切すぎて　失いたくない相手」

それって...

「失いたくないならなんで自分のものにしないんですか？」

「...わからないか」

田村くんの声は凄く切なかった。

「はい。わかりません」

「...
　坂井、いまどこにいる？」

「事務所の駐車場です」

「5分待ってろ」

そう言って電話が切れた。

田村くんと璃子さんの間に何があったのだろう...

僕は数年前にバーのカウンターで
田村くんが璃子さんを優しい瞳で見つめていた
あの眼差しを思い出していた。