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淡雪

第15章 策略

「璃子さんは

 承知したんですか?」

僕はキャシーに強く迫る。


「もちろん」

キャシーさんは余裕の表情


「そんな話聞いてないです」


「でしょうね。

 今話したばかりよ。

 電話だったけど彼女は承諾してくれたわ」


「そ...んな...」


僕は全身の力が抜けていくのを感じた。


ーー僕は彼女を守ると決めたのに

  璃子さんにも

  田村くんにも

  宣言したのに...


「そういうことだから

 これから璃子が契約の話をしに来るわ」


キャシーさんはそれだけ言うと
部屋を出ていった。


ーーどんな顔をして会えばいい?!

  僕は...

  僕は...


「賢夢?」


マネージャーの声が遠くに聞こえる。


「...知ってたんだよね...」

僕は呟いた。

マネージャーは返事をしない。


「知ってたんだよね!!」

今度は大声で立ち上がり机を叩いた。


「ああ」


マネージャーは表情もなく答える。


「なんで?!」


「お前は璃子さんと付き合いたかったんだろ?

 堂々と。

 お前はアイドルなんだ。

 アイドルが恋人宣言してなんのリスクもないと思ってたのか?


 ここは芸能界だ

 利用できるのもは利用する。

 これがこの世界だよ。

 綺麗事ではやっていけないんだ。

 子供じゃないんだ考えればわかるだろ


 事務所が悪いんじゃない


 お前が 甘いんだよ     」


その言葉は俺を打ちのめすには
あまりにも簡単だった。





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