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淡雪

第17章 誓約

ブランド直営店がこれでもかとその存在を誇示する銀座


俺は車を通りの枠付きに停めた。


車を出て歩き出す。


「行くぞ坂井」


なぜか俺より張り切っている田村くん


てっきり赤い箱の店や蛇がビルに巻き付いている店に行くのだと思いきや


裏通りの方へ歩いていく。


「どこ行くんですか?」


「手頃でいい店があるんだよ」


田村くんはスタスタ歩いていく。


裏通りの路地を曲がるとこじんまりとした宝石店。


ドアマンもいないその店の扉を押して田村くんはその店に入っていった。


「いらっしゃい」


初老の老人一人の店。

眼鏡をあげて僕たちを見たその男性は
田村くんに向かって微笑んだ。


「ブランドショップじゃないから相応の値段で買えるし、質がいい。

 きっといいものが買えると思うよ」


田村くんは僕に向かってそう言った。


「何をお探しかな?」


男性は僕に向かって優しい笑顔を向ける。


「えっと...

 その...

 婚約指輪を...」


やっぱり宝石店って苦手だ...


男性はにっこり笑って頷いた。





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